UNICEF國井修医師講演 – 東北地方太平洋沖地震の今後の保健医療対策 -

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2011年3月21日 -- Mr. Union

死者・不明者が2万名を超えるなど戦後最大の被害規模となりつつある東北関東大震災。発生から一週間が経過した現時点でも生存者の捜索・支援物資の 輸送が懸命に実施されている。一方、寒さや食料の不足から心身の不調を訴える声が、避難所の子どもや高齢者を中心として相次いでいる。

今 後は避難所の健康管理をはじめとした二次災害の防止が重要となる中、国連児童基金(UNICEF)ソマリア支援センター保健・栄養・水衛生事業部 長で、阪神淡路大震災や各地の紛争地域での活動経験を持つ國井修医師が民主党の災害対策メンバーに対して講演を行った。主催者の一人である民主党藤末健三 参議院議員のブログより講演概要を以下に転載する。

http://www.fujisue.net/archives/2011/03/unicef.html

國井医師はすでに日本ユニセフ東日本大震災支援対策委員会フィールドマネージャーとして20日に宮城県仙台市の被災地に到着し、宮城県庁災害対策本部と今後の支援について協議を行っている。

http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011_0320.htm

今 回の災害は死者・行方不明者数の多さに加えて、被害地域が複数の県にまたがっており広域であるという特性上、医療スタッフ一人にかかる肉体的・精 神的負担がこれまで以上のものになることが予想されている。遠隔医療・情報共有などのIT技術を駆使するなどして、現地スタッフ一人一人の負荷を軽減しつ つ、その能力を可能な限り最大化することが求められるであろう。

講演概要

講演: 「阪神淡路大震災、スマトラ島大津波、ミャンマーサイクロンの経験から学ぶ – 東北地方太平洋沖地震の今後の保健医療対策 -」

日時: 2011年3月17日(木)

講師: 國井 修 医師(UNICEFソマリア支援センター保健・栄養・水衛生事業部長)

講演内容のポイント
  • 災害後の緊急支援は、様々なフェーズにおける迅速なニーズ把握とそれに則して優先順位の高いサービスを提供することが重要
  • スマトラ島津波では死者の99%が津波発生後3日以内に起こっていたが、今回の日本の大地震では高齢者、特に慢性疾患を患っているものが多いため、避難所での疾病予防・管理が重要
  • 遺体から感染症が流行することはないが、マスコミが誤った情報を流して不安をあおることが過去にはあった。ただし、遺体処理の時に、病原菌を含む体液が伝播する可能性も否定できないため、遺体を扱う人はマスク、

    手袋などでの保護をすべき。また、精神的トラウマになりやすいので、遺体との接触を最低限に抑え、メンタルケアが必要。
  • 特に、今後重要な問題はインフルエンザを含む呼吸器感染症、ノロウィルスを含む感染性胃腸炎、麻疹、破傷風、結核、高血圧・糖尿病を含む慢性疾患、急性ストレス症候群・PTSDを含む精神的問題である。
  • 避難所をベースとした感染症サーベイランスにより、感染症流行の早期警告システムを立ち上げる必要あり。
  • 手洗い、うがい、マスクの着用などの予防、慢性疾患患者(特に透析患者)リストの作成、その治療・管理に必要な医薬品・資機材の確保、管理プランの策定、専門支援ネットワークとの連携などが重要。
  • 様々な医療ボランティアが活動を開始するものと思われるが、できるだけ巡回診療ではなく、それぞれの避難所の人々を長期に責任もって診療・管理する医療チーム、保健師が必要。
  • 保健医療サービスの重複・不足がないよう調整が必要だが、初期には行政による調整機能が不十分なため、近隣で活動している医療チームは自主的に定期的な会合を開き、情報交換を開始することが必要。
  • その際、避難所におけるハイリスクの被災者(慢性疾患有病者など)をリスト化して、特別の配慮・ケアをすることが必要。
  • 阪神淡路大震災のときは、高齢者に比べ、妊産婦、乳幼児に対するケア・配慮が少なかった。
  • 子どもは遊びなどを通じて、心の傷を癒したりするので、「子どもに優しい空間」などをつくる必要がある。
  • 妊産婦も特別の配慮が必要で、特に母乳を継続させるための場所、環境作りなどが重要。
  • 阪神淡路大震災ではボランティアの中に過酷な環境で過剰な活動をしたためバーンアウトした人がいる。休息、睡眠、栄養などが重要で、そのためのガイドラインなども必要。
  • 外部の医療支援者と現場のニーズのマッチングをする機関・チャンネルが必要。被災した県・市町村は現在のところその調整機能を担うのは困難なため。
  • 一般のプライマリヘルスケア診療と、専門組織(循環器、透析、メンタルヘルスなど)をうまく協調・連携させる仕組みづくりが必要。
  • サービス提供者(支援者)と受益者(被災者)が完全に分かれるのではなく、被災者が自立のための支援活動に参加させるような仕組みづくりが必要。
  • 特に、高齢者と子どもなどが混合したラジオ体操、高齢者がこどもに昔話をする、など様々な年齢層が一緒にレクリエーションなどをすることで、心の癒しをお互いに与えるなどの試み。
  • メンタルヘルスケアはできるだけ専門家グループによる支援が必要だが、通常の支援者にもできることがあるので、簡単なトレーニングやパンフレットなどで早めにケアを始めることも考慮する。