米太陽電池モジュールメーカー、First Solar社が日本市場へ進出

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2013年11月19日 -- Mr. Union

米太陽電池製造大手のファースト・ソーラー(First Solar)社は、日本市場への進出策を相次いで発表した。100億円を投じてメガソーラー(大規模太陽光発電所)開発を行うとともに、太陽電池モジュールの販売契約をJX日航日石エネルギーと締結する。

太陽電池製造から発電所建設、資金調達まで手がけるファースト・ソーラー社

米ファースト・ソーラー(First Solar)社は1999年に設立された太陽電池モジュール製造メーカーで、太陽電池の中でも特にカドミウムテルル(CdTe)太陽電池と呼ばれるタイプの製造を手がけている。

変換効率は結晶シリコン系太陽電池と比較して劣るものの、製造コストが安いという特徴を活かし、主にメガソーラー(大規模太陽光発電所)を中心に展開してきた。

調査会社IHSの調査によれば、2012年の太陽電池モジュール出荷量は約1,800 MWで世界第2位。カドミウムテルル(CdTe)太陽電池が分類される薄膜太陽電池市場は縮小傾向にあるものの、2014年は世界の太陽電池モジュール出 荷量の約4%を占めるとの予想もある。

しかしながら、ファースト・ソーラー(First Solar)社の事業領域はCdTe太陽電池の製造に留まらない。近年多くの太陽電池モジュールメーカーが利益確保を目的として川下側へと事業領域を拡大 しているが、ファースト・ソーラー(First Solar)社もそのうちの一社だ。

太陽電池モジュール製造に加え、プロジェクト開発、EPC(設計・機器調達・建設)業務、維持管理、さらにはプロジェクトファイナンスによる資金調 達の助言まで展開。これら「システム事業」と呼ばれる事業領域の売上高は、2011年の8億2,500万ドルから、2012年には21億8,300万ドル へと165%増と大幅に増加している。

逆に、太陽電池モジュール製造事業は2011年の19億4,200万ドルから、2012年には11億8,600万ドルへと39%減となっている。 2011年はシステム事業の売上高が太陽電池モジュール製造事業の売上高の半分以下に留まっていたが、2012年には逆に2倍弱となっており、これらの数 字からもファースト・ソーラー社が太陽電池モジュール製造から、プロジェクト開発をはじめとしたシステム事業へと軸足を移し、急激に実績を積み重ねてきた ことがわかる。

100億円を投じ日本で太陽光発電所を開発、太陽光発電導入コスト削減のきっかけとなるか

ファースト・ソーラー(First Solar)社は、このシステム事業のノウハウを活かし、日本において太陽光発電所開発事業を展開することを11月15日に発表。日本政府が2020年ま でに28 GWの太陽光発電を導入するとの目標を掲げており、太陽光発電の需要が大きいことをその理由として挙げている。

投資額は約100億円。現在の太陽光発電所建設に必要な平均的コストを用いて単純に出力換算すると、合計で30~40 MW規模に相当するものの、前述の通りファースト・ソーラー社はプロジェクトファイナンスと呼ばれる資金調達スキームのノウハウを持ちあわせており、最終 的な導入量はさらに拡大する可能性がある。

同社のシステム事業における日本市場進出にあたってのもう一つのポイントは、どのタイプの太陽電池モジュールを使用するのかという点だ。ファース ト・ソーラー(First Solar)社が製造するのはカドミウムテルル(CdTe)太陽電池であるが、日本ではカドミウムが原因の公害病であるイタイイタイ病の発生により CdTe太陽電池が敬遠されてきたという歴史がある。

しかしながら、火事・モジュール破損といった予測可能事故におけるカドミウム・カドミウム化合物の環境への排出は極めて小さいこと、さらにファース ト・ソーラー社が世界全域を対象にCdTe太陽電池モジュールの回収・リサイクルプログラムを導入しており廃棄段階での流出リスクがさらに低減されるとい う研究結果もあり、日本市場における普及可能性が全くないとは言い切れない。

ファースト・ソーラー社のプレスリリースにおいて使用する太陽電池モジュールへの言及は無いが、今回をきっかけとして低価格のCdTe太陽電池モ ジュールの日本市場における普及が進めば、将来予定されている太陽光発電の買取価格引き下げと合わせ、太陽光発電の導入コスト削減に対して影響を及ぼす可 能性も否めない。

高効率・低コストの結晶シリコン太陽電池の独占販売契約をJX日鉱日石エネルギーと締結、日本市場のニーズに対応

一方、日本における太陽光発電所開発事業への参入と時を同じくして、同社製太陽電池モジュールの日本での独占販売契約をJX日鉱日石エネルギーとの間で締結したことを明らかにしている。

独占販売契約の対称となるのは前述のCdTe太陽電池ではなく、今年4月にファースト・ソーラー社が買収したテトラサン(TetraSun)社の技 術を活用した高効率結晶シリコン太陽電池モジュールであると見られる。JX日鉱日石エネルギーは2009年よりテトラサン社に出資し筆頭株主として研究開 発活動を支援。今年4月にファースト・ソーラー社がテトラサン社を買収した際も、販売パートナーシップ契約について協議を開始したことを明らかにしてい た。

通常、太陽電池は高い変換効率を実現しようとすればするほど、製造コストが高くなる。テトラサン社の技術の特徴は、従来の多結晶シリコン太陽電池セ ルと同等レベルの安価な製造コストで、21%を超える高い変換効率を実現できるという点にあり、高効率の太陽電池をより低コストで製造することが可能だ。

今回の独占販売契約締結のプレスリリースにおいて、対象となる市場セグメントは明記されていない。この点、メガソーラーをはじめとした産業用に展開 される可能性も否定できないが、どちらかというと限られたスペースにより多くの出力を搭載することが求められる住宅用市場を中心として展開される可能性が 高い。実際、同じく高効率を特徴とするパナソニックのHIT太陽電池や、東芝(SunPower社がOEM供給)の単結晶シリコン太陽電池が強いシェアを 持っている。

長期的な市場動向を踏まえた上での日本市場進出か

2012年7月に固定価格買取制度が開始されて以来、世界的に見ても高い価格により急激に成長を続ける日本の太陽光発電市場。

しかしながら、市場の急激な拡大の一因である公共・産業用市場は2014年度をピークに縮小に転じ、2020年度には2012年度実績を下回る見込み。その一方で住宅用市場規模は安定した規模で推移すると見られており、中長期的には再び住宅用市場がメインとなる。

今回、太陽光発電所の開発、高効率結晶シリコン太陽電池モジュールの販売に乗り出すファースト・ソーラー(First Solar)社。日本市場への参入は海外勢としては遅い部類に入るが、制度開始後1年間の市場動向を見極め、長期的な視点に立った上での決断であると見る ことができるのかもしれない。

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